東京サブタレニアンズ - 裏日本の裏通りから愛をこめて東京を離れてここ金沢へとやって来たのは今年の夏だ。長年やって来た編集の仕事も廃業し、家族とも別れ、みなさんさようならどうかお元気でと猫二匹だけを連れて縁もゆかりもないこの北陸の地にやって来た。 それを擬音で表現するならば、ただほんとに「ふらり」とやって来たというわけで、おれは別にここで「なにか大きなことをやろう！」とか「第二の人生がんばるぞ！」とかそういう鼻息荒いことはつゆほどにも思っていない。君もよく知ってるとおりおれはなまけものだからね。 なのでこの土地にやって来てやっていることといえば、小京都と呼ばれる古い城下町をほっつき回ったり、金沢港や手取川の上流で釣りをしたり、天気のいい日は白鷺や鴨が泳ぐ犀川の川縁に寝っ転がったり、夜にはぼんやりと星が瞬く田舎の夜空を眺めたり、とまあそんなところ。のんびりとした田舎暮らしを楽しんでいる。 おれはこの町が気に入ってる。すごく気に入った。この町の人
