近年、心臓部ともいえるエンジニアのリストラが相次いでいるというソニー。しかし、ソニーを退いた面々は枯れかかった本体をよそに、そのDNAをタンポポの種子のように飛ばし、根を張り、新たな生命を育んでいる。その逞しさの秘訣は何か。清武英利が追った ◆清武英利記者(巨人元代表)渾身リポート 「ソニー通り」と呼ばれた道が、東京の品川区にある。 通りの起点と終点に対照的な生き方がある。「喜怒哀楽」の4文字で表すと、起点の周辺は「怒」と「哀」の人たちが多く、終点界隈に住む人々の表情は、「喜」と「楽」の色が濃いように見える。 通りは北品川の御殿山から、JR五反田駅東口へと延びている。その起点は、8階建てのソニー旧本社ビルあたりだ。井深大氏と盛田昭夫氏が設立した「東京通信工業」は、ここから世界企業「SONY」へと駆け上がった。 今、この旧本社ビルは、ニッポン家電業界のきしみの象徴である。ビルは「御殿山テクノ