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ブックマーク / dain.cocolog-nifty.com (4)

  • 運が通れば道徳は引っ込む『不道徳的倫理学講義』

    たとえば、高速道路に「たまたま」飛び出した人をはねて死なせてしまったとする。ドライバーは「注意して運転していれば避けられたはず」として、過失の度合いが図られる。 あるいは、通勤中、「たまたま」通り魔に襲われたとする。「過失」を無理やり探すなら、その道を選んでしまったことになるのだろうか。 この「たまたま」が厄介だ。 それまでの善行・悪行に関係なく、「たまたま」悪い目に遭う。悪い結果になっていないのは、偶然に過ぎないのに、結果が「たまたま」悪ければ、悪い原因が遡及される。 理想の世界では、善人には報酬が、悪人には報復が与えられる。災厄に見舞われた人には埋め合わせとする幸福が与えられる。 だが、現実は違う。善悪と幸不幸が同期しない。現実は、むしろ運に左右される。そのため、善悪を語る場から、運を排除しようとする。 宗教や神話は、「神意」や「天命」と呼ばれる神の意志=運命を取り入れ、前世や来世の因

    運が通れば道徳は引っ込む『不道徳的倫理学講義』
  • メタファーから解く時間論『時間の言語学』

    時間とは何か? 言語学からの腑に落ちる解答。「時間」について思考の奥底で抱いていた認識が暴かれる一冊。 アウグスティヌスは、この問題の質を端的に語る。「時間とは何か。人に問われなければわかっているが、いざ問われると答えられない」。「時間論」といえば、これまで物理学や天文学、哲学や心理学、社会学からのアプローチがあった。それぞれの分野での見解はあるのだが、著者はこれに疑義を呈する。 つまりこうだ。どの学問領域であれ、時間の「流れ」や「進行」を口にしながら、その方向を当然のように過去から未来へと想定している。ビックバンをはじめとして、時間の「矢」は未来へと向かっている―――ここから疑い始めている。そして、「時間とは何か」に直接答えるのではなく、「時間をどのようなものとして捉えているか」という観点から、時間の質に迫る。 著者はレトリックを専門とする言語学者。日語と英語の豊富な事例を駆使しな

    メタファーから解く時間論『時間の言語学』
  • 猫専門書店「にゃんこ堂」いってきた

    珍しい専門店「にゃんこ堂」。とはいっても、神保町の姉川書店という普通の屋の中に棚がある構成で、いわば書店内書店なのだ。客足が途切れず、好きホイホイとなっている。 エッセイ・コミック・写真集、絵小説・専門書と、ひたすらづくしで、好きにはたまらない棚だろう。大型書店で限定期間で、を揃えることはあっても、ここのように常設しているのは珍しい。専門ネットショップ「書肆 我輩堂」にも悶絶させられるが、ここのように実際に手に取れるのも嬉しい。 たぶん、今あなたの頭に浮かんだはだいたいある。『100万回生きたねこ』『語の教科書』『綿の国星』あたりがピンとくるが、ありったけを貼っておくので、あなたのイチオシがあるかどうか、探して愉しんでくださいませ。 『ネコを撮る』という発想がイイ 『ノラや』『綿の国星』は鉄板ですな 『ねこのオーランドー』も定番と聞く と写真

    猫専門書店「にゃんこ堂」いってきた
  • 「できない」を証明する知的興奮『不可能、不確定、不完全』

    「できない」を納得してもらうのは難しい。 なぜなら、あらゆる解決策を吟味して潰していかねばならないから。いっぽう「できる」ことを証明するのは簡単だ、解法を一つだけ示せばいいのだから。 たとえば、上司に「できません」と伝えると「できない理由を言え(俺が論破してやる)」と返される。無茶でも「できます」と言うほうが楽である(ただし、納期・コスト・品質そして健康が犠牲になる)。最近では小ずるく言い方を変え、「現実的ではありません」と理由を説明するようになった(これで説明責任が相手に移動する)。ビジネス上のたいていの問題は、カネか時間かで解決するが、常識的な時間内に解決するのは難しい。 ところが、世の中に、いくらカネと時間を注ぎ込んでも解決できない問題がある。荒唐無稽なファンタジーという意味で「できない」というのではなく、数学的な帰結として「できなさ」が証明されている問題である。『不可能、不確定、不

    「できない」を証明する知的興奮『不可能、不確定、不完全』
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