世界中の土の中にいて、生物学や遺伝学においてもっとも研究されている動物のひとつである線虫のC.エレガンス。(PHOTOGRAPHY BY SCIENCE PHOTO LIBRARY / ALAMY STOCK PHOTO) 「ミミズは音を聞けるのか」。これは人々が昔から抱いてきた疑問だ。1800年代、ダーウィンは自分の息子にミミズに向かってファゴットを演奏させ、彼らが身動きするかどうかによって、その答えを得ようとした。ダーウィンが出した答えは「聞こえない」だった。 以来、聴覚は脊椎動物と一部の節足動物でしか確認されていなかった。ところが、9月22日付けで学術誌「Neuron」に発表された研究で、生物学の研究に多用されているC.エレガンスという線虫に聴覚があることが明らかになった。C.エレガンスには、耳のような特別な器官があるようには見えない。だが、皮膚全体が音を聞くいわば鼓膜として機能し、