1.江戸幕府は関東ロームの上に 世界史における文明の勃興 (ぼっこう) と衰亡が、水 (河川) や土壌と密接な関係にあることはよく知られた事実である。このことはまた、日本においても当てはまる概念であるが、詳しい考察はほとんど見たことがない。日本列島全体が、豊富な水と肥沃な土壌に恵まれているため、注意を喚起するに至らなかったのだろうか。 しかし、たとえば近世に発達した日本の大都市 「江戸」 をみると、やはり水や土壌と深い関係にあることが分かる。関東平野は、戦国時代まではほとんどが原野で人口も少なかったようだ。いくつかの大名が小さな領地を構えていたにすぎない。この地の土壌は、いわゆる 「関東ローム」 が大部分を占め、当時は農業に適さない土地だったのである。そしてこのことが、関東平野の発展を妨げていたと考えられる。 関東ロームは、箱根、古富士、赤城、榛名、浅間などの各火山から噴出した火山灰が厚く