すがるなく秋のはぎわらあさたちてたび行く人をいつかとかまたん/よみびとしらず花札の絵柄のような春よ来いなんてことない日も悪くない/俵万智うしろ手に堕ちし雲雀をにぎりしめ君のピアノを窓より覗く/寺山修司足もとに末枯れゆく草おほひゐてザボンひとつを分けあひて食ふ/小山光夫山川のとどろとどろと暮れゆけば西の狭間の光こほしも/土屋文明やるせないと思えるうちはまだ光っているのだろうなブラウスふわり/野口あや子いるんだろうけど家に入って来ないから五月は終わり蚊を見ていない/永井祐夕焼けの雲に向かって「アカ」「アオ」と水兵さんの手旗信号/穂村弘台風が近づく朝にサキちゃんもカイくんも来てお鍋は空っぽ/林あまり泳ぐには少し早いね真っ白な切手を売って暮らしていたい/服部真理子やさしくて怖い人ってあるでしょうたとえば無人改札機みたいな/杉崎恒夫あたたかな桃と思えば産まれ出てまもなく吾子の頭に触れる/森垣岳ついて