*鍋 寒くなってくると鍋物が恋しくなる。何人かでひとつの鍋をつつくのは幸せだ。仲良しだ。お腹も心も温かくなる。麺やご飯を入れて「しめる」時はこの上もなく幸せをいただける。 基本的に鍋料理はいろんなものを1つの器に放り込む。ここで生まれる様々な食材のハーモニーがいろんなおいしさをつくってくれる。いろんな味覚と次々出会えるすばらしいものだ。 さて、問題はこの放り込む作業だ。鍋奉行がいれば、奉行に任せておけばいいのだが、奉行はそんなにいないから奉行だ。 したがって、たいていは平民が鍋を扱うことになる。平民の投入作業にはいろいろ作法があるようだ。本当に投げるようにする人もいれば、意味なくかき混ぜて顰蹙をかう人もいる。道具を必要以上に使い分ける人も現れたり、気づけば菜箸で食べていたりする人も出たりする。 お店のあちこちで鍋物が食べられている時、少し見回すだけで、同じメニューなのに、その見え