こんな話がございます。 昔、周防国に大きな店構えの商家がございまして。 長年、一匹の猫が住み着いておりましたが。 この家のお内儀(かみ)が、質(たち)の悪い女でございまして。 いつも、この猫をいじめておりました。 猫嫌いなのかといえば、そうではない。 勝手に住み着いた猫を、もう五年も飼っている。 朝昼二度の餌もしっかり与えます。 それでは大事にしているのかといえば、そうでもない。 見かけるたびに外へ放り投げたり、蹴飛ばしたり。 酷い時には、焼け火箸で頭を叩いたり。 生かさず殺さず、何かのはけ口にしているとしか思えない。 猫の方でこの家を出ていかないのにはわけがありまして。 何も、ネズミがたくさんいるからというのではございません。 この家の女中が、猫を哀れに思っておりまして。 いつも優しく接してくれるからでございました。 その猫が、ある日ふっと姿を消しました。 勝手口の脇には、いつもはすぐ空
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