[解説] エノク書は、旧約偽典のうち最大のもの(108章)で、もとはアラム語ないしヘブル語で書かれ、少なくとも前1世紀には、アラム語「エノク五書」が存在したといわれる。その内容は次のように分かれていたといわれる。 (1)天文の書(72-84) ペルシア時代、おそくともヘレニズム時代初期成立。 (2)寝ずの番人の書(1-36) 前3世紀成立。 (3)巨人の書 前2世紀末成立。 〔譬話の書(37-71)〕 前270年ごろ成立。 (4)夢幻の書(83-90) 前164年成立。 (5)エノク書簡(91-108) 前100年ごろ成立。 この全体を知りうるのは、エティオピア語訳によってであるが(『聖書外典偽典』第4巻、旧約疑典IIに、村岡崇光訳で収録されている)、訳者村岡崇光のまとめでその内容を見ると、 — 1.1-5.9 エノクは幻のなかで神を見、またみ使いたちが悪人にそなえられてあるところ