パリ同時多発テロは、過激派組織「イスラム国」(IS)の国境を超えるネットワークの存在を浮かび上がらせた。シリアで立案し、ベルギーで準備。過激思想に染まったフランスの若者らが自身の命を投げ出して市民の命を奪う。ふだんの暮らしのすぐ隣に、闇が広がっていた。 パリ北東の移民が多い郊外の町ドランシー。赤や青の遊具を備えた子どもの遊び場を囲むように、れんが造りの公営団地が立ち並ぶ。ここでサミー・アミムール容疑者は育った。 3階にある容疑者宅を訪ねると、玄関の扉は木の板でふさがれていた。テロの直後、警察が突入したと聞いた。容疑者は13日夜、パリのコンサートホール「ルバタクラン」で自動小銃を乱射し、観客らを無差別に殺害したと疑われている。自身はその場で死亡。28歳だった。 「静かで、礼儀正しい青年だったよ」。容疑者宅の隣に住むリシャル・ベラセムさん(65)は取材にそう語った。アルジェリア出身の両親と、姉