公共貸与権をめぐる国際動向 1. 公共貸与権とは 公共貸与権(public lending right:「公共貸出権」「公貸権」ともいう。)を一言で説明すると,「図書館の貸出しに着目して何らかの金銭を作家に支給する制度」となる。このような制度は現在,西欧諸国を中心に,だいたい20か国程度で設けられている。 この制度の名称には「権」という言葉が含まれているため,著作権のように,あたかも著作物の原作品または複製物の貸出しを禁止する権利であるかのような印象を受ける。しかし,このような名前が付けられたのは沿革的な理由(1)からに過ぎず,権利の性質とは何ら無関係である。 また,著作権の場合は,通常その利用者から著作権使用料や報酬などの支払いを受ける。これに対し,公共貸与権の場合には,ごく少数の例外を除き,その財源を利用者である図書館ではなく,国や地方自治体が負担する仕組みを採用している。 その上,