諸君。あたしは紙の本が好きだ。 紙の本で小説や漫画を読むとき、紙の質感とともに物語が記憶される。 新しいジーンズで世界の座り心地がかわり、音楽を聞きながら読んだ漫画のテーマソングがその音楽で記憶されるのと同じで、ザラザラしたあるいはスベスベした紙の質感は本の思い出を強いものにしてくれる。 でもね諸君。あたしはおんなじ理由で電子書籍もすごく好きなんだ。ツルツルとしたまったく同じ触感・同じ重さのままページを繰っていくとたぶんその小説や漫画に余計な記憶を付与せずに純粋に物語として記憶できるんじゃないかって思えるからなんだ。 一方であたしは紙の本に恐怖する。あたしの家はとても狭いのだけれど本棚には本がびっしり詰まっていていつ床が抜けてもおかしくないし、地震があればお気に入りの本に頭をつぶされて死ぬと思う。人によってはその死に方は本読みとして本望だねって言うだろうけどあたしはちょっとご遠慮したい。