今思うと私は恵まれた環境で育ったように思う。 当たり前だと感じていた温かい家庭で育ち、友人にも恵まれた。 その副作用として、20代前半頃までは基本的に人のことを簡単に信用していた。性善説を信じ、悪い人というのはどこか遠くの自分とは違う世界に生息しているものだと思っていた。 ところが、疑いもしなかった当時の一番身近な存在であった元婚約者の浮気により婚約破棄となり、その後の海外生活で辛酸を舐め、心身ともに疲弊した。 そこでようやく「他人に期待しない」ことが精神的ダメージを少なくする自己防衛する手段だと分かったのだった。 大多数の人は分かっていることかもしれないが、私は30近くなるまで分からなかった。 「期待」と言っても、人に対して大きな期待をしていたわけではない。常識的にこうするだろうなという予想も海外では通用しなかった。 人種差別もされたことがあった。 自分の成功や利益のためなら平気で人を貶