イタリアのSF誌〈ウラニア〉主催コンテストの1995年度受賞作。現代イタリアSFの邦訳は珍しいが、出版事情は別にしてもこの作品を見逃してはいけない。これほど痛快なSFを読むのは久しぶりだ。ややこしくなりがちな時間アイデアを、なんともスッキリ鮮やかに仕上げている。エンタメ傾向の時間テーマというと、SFファンは「場当たり的演出に走って整合性を蔑ろにしてるんじゃねーだろーなー」とついつい警戒するわけだが(某映画でヒドい目に遭っているせいか)、『時鐘の翼』はキチンとスジが通っているのでご心配なく。 本作品が「スッキリした展開」と「整合的性」とのうまく両立させているのは、独自アイデア(=ロジック)の導入によるところが大きい。 (1) 過去への遡行は31億5300万秒(約100年)の間隔でしかできない。繰り返せば200年前、300年前へと行けるが、13年とか57年とか中途半端はダメ。 (2) 時間遡行