評者:君塚直隆(神奈川県立外語短期大学教授) 2010年代へと突入しようとしている昨今の国際政治は、米ソ冷戦の終結から20年の時を経ようとしているが、相変わらず混沌とした状況が続いている。その国際政治の枠組や、現代の世界に見られる主権国家間の関係が始まった出発点とされる出来事、それが17世紀前半にヨーロッパの中央部で繰り広げられた三十年戦争(1618~48年)であり、その講和のためのウェストファリア条約であった。この条約を契機に、それまで皇帝の権限が強かった神聖ローマ帝国内の各領邦の君主たちに近代的な意味での「主権」の基盤が与えられ、これ以後、ヨーロッパには各々に領域的な最高性を帯びた「主権国家」が誕生するとともに、それら対等な国同士の「国際関係」も築かれていったとされてきた。 しかし、これは真実なのであろうか? 本書は、国際法学者としての視点からこの問題に取り組んだ、著者の四半世紀にわた