トルストイ一家が1882〜1901年の冬季に暮らしたモスクワ市内の邸宅の居間。「トルストイの家博物館」として公開されている。左手にはソフィア夫人らの肖像画。夫人は右手窓際の机で夫の原稿に目を通し、家庭の事務作業をした 世界の文学に多大な影響を与えたロシアの作家、レフ・トルストイの没後100年、アントン・チェーホフの生誕150年にあたる今年、文豪2人の人生で最大の「謎」に改めて光が当てられている。トルストイはその最晩年に家出を敢行し、ロシア西部の寒村の駅で息を引き取った。チェーホフは人気作家の座にあった30歳当時、“囚人の島”だった極東サハリン(樺太)を決死の思いで踏査している。一見、不可解な行動の中に、2人の素顔と本質を見いだす試みが続いている。(ユジノサハリンスク 遠藤良介) 82歳のトルストイが突如、ロシア西部の邸宅を抜け出したのは1910年11月の早朝だった。妻、ソフィアに悟られない