部下が上司の仕事を「やり過ごす」ことは日本企業に多いそうだ。欧米流から見れば無駄でしかないのに、なぜだろう。「やり過ごし」の背景に、長期的成功を果たせる組織メカニズムがあったことを示したのが『できる社員は「やり過ごす」』である。経営組織論の研究者である高橋伸夫氏が著者。 社員のモチベーションを高めるには 退職願望率の違いを示した図を見て頂きたい。 縦軸は、職務への満足度。横軸は、将来的な仕事の見通しを示している。現時点が左下にいるとする。今の仕事に満足させるか、今は不満だけど将来への見通しを与えるか、どちらが退職率を下げられるだろう。統計データによれば、見通しを高める側に軍配があがる。 なぜなら、成長とやりがいが得やすい環境になるからだ。見通しがきけば、中間管理職は部下の「尻ぬぐい」をする余裕が生まれる。そのため部下に失敗させたり、適度に「やり過ごし」できるか試せる。だが成果主義企業では部