『ネット右翼とは何か』(樋口直人ほか、青弓社、2019年)の書評を『赤旗』に頼まれたので執筆した。そのロング・ヴァージョンを掲げておく。 言葉は流布しているが、一意的な定義は確定していない。だから「ネット右翼とは何か」という本が書かれることになる。 マックス・ウェーバーの『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』と仕掛けは同じである。ウェーバーは「資本主義の精神」が何であるかについて定義しないまま本を書き出している。そういうものがあることだけは感知されるので、その具体的な「例示」を羅列する。そうしておけば、本を書き終わることには概念の輪郭が刻めるだろうという見通しである。 それでよいと私は思う。新しい事態を指示する新しい概念については、さしあたり際立った例示が示されれば十分である。 本書では「ネット右翼」についてのいくつかの例示が示されている。「ネット右翼とは何か」について、それぞれの