■大事なことをつなげていく 学術書と聞くと、単に学者の論文を集めた本、と思う人もいるだろう。でも、まず編集者にアイデアがあり、書き手を探し、できる本もある。 日本が開国した時、欧米だけでなく、中国系の商人もたくさんやってきた。それが日本の経済史に衝撃を与えた——という論文を読んだ名古屋大学出版会の編集者・橘さんは、「アジアからの衝撃は、文学では?」と考え、書き手を探し始めた。数年を経て、たどり着いたのが、当時、奈良女子大にいた中国文学者の齋藤希史(まれし)さんだ。「初めてお会いした時から、百年の知己に会ったようでした」 齋藤さんが東京大へ移ったあとも、なかなか本の形は見えなかった。だが、「アジアからの影響」ではなく、「日本と中国の相互作用」と考え方を変えたら、目次ができて『漢文脈の近代 清末=明治の文学圏』(名古屋大学出版会)が生まれた。発端の論文から十数年。橘さんは言う。 「自分がこれは
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