10年後、クルマの中でのエンタメはこう変わる 203X年、阿部さん(仮名)にとってクルマは自分を開放できる異次元の空間だ。 土曜日の昼下がり。妻と息子は一緒に出かけて自宅にはひとり。金融機関に勤める30代後半の阿部さんは、のそのそと玄関を出てクルマに乗り込む。ぼぉーっとしていた顔から一転、クルマを始動させるとギラギラした顔つきになる。家族に見せる「優しい父さん」でも、職場での「そこそこできるサラリーマン」でもない。 すべての車窓が黒く光り、車内は次第に暗くなる。フロントウインドーに見えていた坪庭のツツジも見えなくなる。漆黒の空間には、徐々に星々が瞬きはじめる。宇宙だ。前面にゲームロゴが浮かび上がる。クルマのハンドルはいつのまにか戦闘機の操縦桿に変わっている。星雲間のワープを本能的に感じ取れるような、ドップラー効果を伴う轟音が鳴り響く。戦闘開始。 一進一退の攻防が続く。撃墜するたび戦果をたた