洋子さんの「100万回生きたねこ」を初めて読んだのは、40年以上も前のことである。安アパートでの学生生活は貧しかったが、住んでいたのは港の見える丘公園まで徒歩20分の閑静な住宅街。山手の通りもドルフィンも休みの日の散歩コースだった。 しかし、現実といえば、山下埠頭のバイトで座骨神経痛になって、痛い足を引きずりながらバイト先と大学を行ったり来たり。未来なんて、どこにあるんだろう。そんなことばかり考え、呆けた日々を送っていたとき、ある人にいただいたのがこの本。100万回生きても、いのちはいつか、終わるんだと思ったら、途端に、泣けてきた。 エッセイ集を読むようになったのは、洋子さんが亡くなってからだ。乳がんだったが、洋子さんは死ぬ気まんまんだった。でも、ほんとは100万回ではなく、あと1回くらいは生き直してやろうと、考えていたかもしれない。それとも、すでに、ねこに生まれ変わって、そこらを散歩して
![休日に開く本=佐野洋子/光野桃/山田太一。 - 言葉と記憶の小径。](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/10a187692d9f16adfeec42667d57484fa7cd10c5/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fcdn-ak.f.st-hatena.com%2Fimages%2Ffotolife%2Fa%2Fakadk01%2F20221019%2F20221019214700.jpg)