2014年秋、北大生がイスラム国に接触しようとして家宅捜査を受けたことが報じられると、生活に困窮した人々――多くが非正規雇用で、働いても生活保護と変わらない程度の収入しか得られない――からそんな言葉を聞くようになった。湯川遥菜さん、後藤健二さんが人質として囚われていることが発覚する以前のことだ。 それは多分に冗談混じりのニュアンスを含んでいたものの、「給料も出るっていうし」「どうせ日本にいてもこのまま使い捨てられるだけだし」「必要とされるし」「バカにされないし」という彼ら・彼女らの呟きは、この国に長らく蔓延する「貧困」が、確実に人の心を蝕んでいることを象徴するものに思えた。