敏腕検事は、なぜ正義を見失ったのか--。証拠品のフロッピーディスク(FD)のデータを改ざんしたとして、大阪地検特捜部検事の前田恒彦容疑者(43)が、証拠隠滅の疑いで最高検に逮捕された。特捜部内で「十年に一人の逸材」「将来の特捜部長」と期待されていた。一方、大阪地検幹部は会見で「捜査は最高検に任せている」と繰り返した。地に落ちた信頼。再生への道のりは遠い。【日野行介、久保聡、古屋敷尚子】 前田検事は東京、大阪の両地検特捜部を歴任した生粋の「特捜検事」。検察庁内では「優秀で、説明がうまい」と評価が高い一方、「功名心が強く、無理な捜査をする」との批判もあった。 大阪地検のある幹部は「取り調べでは、容疑者の気持ちになって本音を引き出すことがうまい、一級の『割り屋』だった」と話す。「『しゃべらないものはしゃべらない』としっかり言う検事だった」と評する声もある。別の地検幹部も「将来の大阪地検特捜部長。