ついに映画「コクリコ坂から」が完成しました。ぼくがジブリで修業を始めてから半年ちょっとが過ぎました。「人はいつも矛盾の中に生きている。人間への絶望と信頼、その狭間(はざま)に人は生きている」。「コクリコ坂から」という作品を世の中にどう伝えていけばいいか、鈴木敏夫プロデューサーが苦難の末にたどりついた文章です。これを予告編の中で朗読したのは加賀美幸子さんです。 (宮崎)吾朗監督に脚本を手渡した後、一切、途中経過を見なかった宮崎駿さんが初号試写会にあらわれました。見終わっていいました。「ストーリーはいい」。隣に座っていた鈴木プロデューサーによると途中からずっと涙ぐんでいたそうです。作画にはいろいろ厳しい注文をつけましたが、映画としては及第点だったようです。 「矛盾の中に生きているというのは宮さんのことなんですよ」。鈴木プロデューサーは種明かしをします。「親父は戦争を本当に憎んでいるのに、子供の