「おっ、風邪かい?」 深夜2時のホテル、受付のおじさんが客である僕の体調をタメ口で心配してくれる。 (あぁ……これだよ、これ。東京にはない優しさ……!) 僕は北海道の遠軽という町で生まれた。 生後すぐに横浜へ引越すのだが、大学ではまた北海道へ戻り、時給630円の映画館の受付バイトをしたり、6時間50円のレンタルDVDで映画をたくさん観たりする生活を送っていた。 そして約5年前、僕は就職で東京へやってきたのだが、今回ひさびさに大学時代の友人と札幌旅行をしようということになり、札幌駅近くにあるホテルの受付にいま立っている。 (やっぱり北海道は寒いから風邪でもひいたかな。明日は朝一でニッカウヰスキーの蒸留所をみて、予約しているウニ丼を食べて、旨い飯と酒を存分に楽しみたいから、今日はもうすぐに寝よう) ・ ・ ・ ・ ・ これは僕が旅した札幌・小樽の備忘録である。 ワンマン電車に揺られて。 あらた