世界を震撼させている新型コロナウイルス。3月11日には、感染者数が1万5000人を超えているイタリアが全土移動制限に踏み切ったほか、同じく感染者数が増えているアメリカは欧州連合(EU)諸国からの入国を停止する措置を講じるなど影響は広がり続けている。 こうした中、イタリアやフランス、イギリスなど多くの国でベストセラーになっているのが、1947年に発表された『ペスト』(宮崎嶺雄:訳)である。フランスのノーベル文学賞作家、アルベール・カミュが書いた同作品は、高い致死率を持つ伝染病ペストの発生が確認されたオラン市が舞台。感染拡大を防ぐため封鎖された街の中で、直面する「死」の恐怖や愛する人との別れ、見えない敵と闘う市民の姿が描かれている。 対応に後れを取り続ける行政や、デマ情報に攪乱される市民――。『ペスト』は70年前に刊行された作品にもかかわらず、新型コロナウイルスをめぐる現状とおそろしく重なり合