講談において、立川文庫を発祥とする猿飛佐助や霧隠才蔵などの真田一族の物語が大きな魅力であったことを、新島広一郎の『講談博物志』を始めとして、当時の多くの読者が語っている。また実際にそれらの物語は現在に至るまで、様々な小説、映画、コミックなどに継承され、連綿と続いているといえよう。 そのような講談のもうひとつの柱に、清水次郎長を主人公とする物語があって、こちらも真田一族と同様に、様々な小説、映画、コミックなどに引き継がれ、繰り返し映画化もされ、人口に膾炙している物語だといってもかまわないだろう。だがこの次郎長物語は舞台を東海地方としているので、これまで既述してきたように、多種多様な文庫による無数の講談物語を生み出した大阪に伝播し、うまく融合しているのか、それが気になっていた。なぜならば、東映の時代劇である次郎長シリーズがその後の仁侠映画ややくざ映画の範となったように思われるからだ。 しかし大