ある男性社員をめぐる給湯室での修羅場 四半世紀におよび会社員生活において、職場で同僚間の怨念が爆発した場面に遭遇したことが一度だけある。そのとき僕は20代後半で(つまり20数年前)、たまたま当時勤めていた会社の東京営業所でのことだ。 同僚との打合せが終わって、馬鹿話をしているときである。 「あんたがいなければ!」 という女性の叫び声が営業所内に響きわたった。声は給湯コーナーから聞こえた。 「何事!」 僕らが駆け付けると、そこは、女性社員が別の女性社員に熱湯をかけようとして、しくじり、双方、泣き崩れて座り込むという修羅場。とあるイケメンをめぐって、双方が嫉妬と憎悪を募らせた末の出来事であった。愛の不時着である。 幸い怪我人はなく終わったが、彼女たちは事後、会社内で腫れ物のように扱われることになってしまった。「仕事ができる人たちなのに、なぜあのような短絡的な行動に……」という疑問が常に付きまと