【1、わたしは言った。「わたしの名前は、S・F(センリュウ・フィクション)」】 ぐびゃら岳じゅじゅべき壁にびゅびゅ挑む 川合大祐 (『スロー・リバー』あざみエージェント、2016年) 照明をつけるのは、開けた場所に足を踏み出すのに似ていた。「わたしの名前は」風に向かって、海に流れてゆく川に向かって、わたしは言った。「フランシス・ロリエン・ヴァン・デ・エスト。わたしはここに住んでいる」 これから一生、わたしは川のほとりで暮らしていこう。ちゃんと人の目に見えるところで。 柳本々々(以下、柳) こんばんは、やぎもともともとです。先日、川合大祐さんの川柳句集『スロー・リバー』(あざみエージェント、2016年)が出版されました。この句集は読んでみるとわかるんですが、テーマがさまざまに仕掛けられていて、読むひとによってそのつど異なる面を取り出せる句集になっているんじゃないかと思うんですね。でもそれで