地下鉄の長い出口を抜けるとそこは雪国……ではなくカサ・デ・アンジエラと書かれたチヤペルが道路を挟んで向かい側にあった。半蔵門線外苑前駅四A出口。エスカレエタアをあがって地上に出ると、私はチヤペルを横目に左折する。婚礼を挙げにきたのではない。私は一つの期待に胸をときめかせていた。アメリカ製のハンバアガアを食べに来たのだ。店の名を「シエイクシヤツク」という。 シエイクシヤツクはニユウヨウクが発祥のハンバアガア・シヨツプである。ニユウヨウクには私の小説を翻訳出版しているクノツプ社もある。鎖国から欧化した日本の食事は、西洋における発展を経ずして、一足飛びに私たちにもたらされた。そのことは日本人の精神面にも影響をおよぼしているであろう。私は日本風に消化されたハンバアガアというものを一度食べてみたかったのである。流行りのフアストフウド・シヨツプなんて、通俗の名所だと思われる向きもあろうが、こうみえて軽