Ⅰ はじめに 本稿が検討対象とするのは、音楽教室における楽曲の利用について、音楽教室が著作権を処理する必要があるのかということが争われた事件に対する上告審判決である最判令和4.10.24判タ1505号37頁(WestlawJapan文献番号2022WLJPCA10249001)[音楽教室]である。本件に関しては、とりわけ音楽教室における生徒の演奏について、演奏の対象となった楽曲の著作権が及ぶのかということについて、これを肯定した第一審判決と、否定した控訴審判決とで判断が分かれており、世間の耳目を集めていた。最高裁は、生徒の演奏の演奏主体は音楽教室ではないと判断したために、音楽教室は教師の演奏に限って著作権を処理する必要がある旨の結論をとった控訴審判決が維持されることになった。 Ⅱ 事案 この事件の紛争は、一般社団法人日本音楽著作権協会JASRACが、その管理する著作物を演奏等する音楽教室、