日本では、両親のどちらかが日本国民でない限り生まれた子に日本国籍は与えられない。ところが、フィリピン国籍の両親を持つ田中健太さん(仮名)は生まれながらの「日本人」として暮らしている。中島弘象さんの著書『フィリピンパブ嬢の経済学』(新潮新書)より、一部をお届けしよう――。 フィリピン人の両親の間に生まれた「日本人」 2020年2月。新宿駅西口でiPadを片手に持った背の高い今どきの若者に会った。彼の名は田中健太(仮名)さん。21歳の大学生だ。 彼からは「本を読んで感動しました。実は両親は2人ともフィリピン人ですが、僕は産まれた時から日本人です。一度お会いしてお話したいです」というメッセージを受け取っていた。 近くのカフェに入り、コートを脱ぎながら、田中さんは照れ笑いした。 「名古屋からわざわざすみません。メッセージでも話しましたが、両親はフィリピン人ですが、僕は日本人として産まれました。とい