世界遺産登録を目指す動きがある長崎市の端島(通称・軍艦島)。戦前その炭鉱に徴用され、長崎原爆投下後に被災地のかたづけにあたった韓国在住の崔璋燮(チェ・チャンソプ)さん(82)が65年ぶりに島に上陸した。「世界遺産として島の本当の歴史を見つめて」。多くの観光客が訪れる島に願いを込めた。【蒲原明佳】 崔さんは市民団体の招きで来日。11日に約2時間上陸し、市の許可を得て島北部の病院前に立ち入り、廃虚と化した工員住宅を眺めた。「死と隣り合わせだった島がこんなに変わった。寂しく、悲しいような複雑な気持ち」と記憶をたぐった。 朝鮮半島南部の益山(イクサン)に暮らしていた1943年2月徴用された。14歳だった。妹と駅まで見送りに来た母が深々と頭を下げ、息子の無事を祈る姿に「涙が出ました」。 汽車と船を乗り継ぎ端島にたどり着いた。朝鮮人の住まいは、工員住宅の地下。3交代で1日12時間、深く狭く息苦しい炭坑