初夏を思わせる強い日差しに、高く舞い上がった背中が重なった。 4月初旬。熊本県益城(ましき)町の児童養護施設、広安愛児園。青々と芝が生い茂った中庭には、いつにも増して歓声が満ちていた。 「決めて!」。子どもたちの声援を受けて、ロアッソ熊本FW巻誠一郎は、強く地面を蹴った。代名詞のヘディング。シュートは見事に、仮設ゴールのネットを揺らした。 どよめきと拍手が一斉に起きる。クロスを上げたサッカー少女が、ホッとしたような表情で駆け寄ってきた。「ありがとう、いいボールだったね」。流れ出る汗もそのままに、笑顔で握手をする。 それをきっかけに、巻は殺到する子どもたちにもみくちゃにされた。「これだよ!『利き足は頭』だ!巻選手はこれで、W杯にも出たんだぞ!」。男性職員が興奮気味に、子どもたちに説明していた。