『傷だらけの天使』の街で驚異の格安物件を見つけた バンドと恋人を失い、一人になった時に引越しを決意 ミュージシャンの僕が選んだのは世田谷区だった 数年前、人に話すと必ずドン引きされる部屋に僕は住んでいた。場所は代々木。新宿と渋谷の間、よほど裕福な人じゃないと住む街の選択肢には挙がらない場所だ。 それまでは、ずっと世田谷区だった。下北沢から近く、ライブハウスの多い新宿や渋谷へもアクセスしやすいことがミュージシャンにとってはベストなのである。そんな、上京以来慣れ親しんだ世田谷から、どうしても離れたくなった。 2000年、29歳の時にバンドが解散した。その後、何かを埋めるように頼まれた仕事をなんでも引き受けていた僕は、ほとんど家に帰れないほどの忙しさだった。当時付き合っていた女性とも会えなくなり、彼女は呆れて僕の元を去っていった。バンドと恋人を立て続けに失い、僕は完全に一人になってしまった。 心