2015-06-30 雨虫(【第9回】短編小説の集い) Tweet 雨が降り出して三日目になった。 朝の番組では、レポーターが緊張した面持ちで実況をしている。 「――えー、JR新橋駅前に来ています。えー、通勤客が多い時間帯なんですが、ご覧ください。人の通りはいつもより若干少ないといった感じでしょうか。皆さんしっかりとレインコートを着込んで雨から身を守っています。いまのところ――」 レポーターも、顔までしっかり覆われたレインコートをしっかりと着込んでいた。まるで原発事故のときに見た防護服のようだ。 「学校はまだ休みなんでしょ」 母がそう言いながら、空になった食器をお茶の入った湯のみに置きかえた。 「うん。連絡あるまでずっと休みだってさ。たぶん雨が止むまで休みでしょ」 ヒロシは湯のみを手に取り返事をした。雨が降った初日の午後からヒロシの通う中学校は休校になっていた。 二人はテレビへと