岩田健太郎氏は感染症の専門家だ。 専門家というのは言わば、知識という海から、私たちに必要な分の海水を一杯のコップに汲んできて説明するようなもので、一般の人はそのコップだけを見て海を理解できないし、誤解が生まれることもある。ちなみに私は医療関係者ではなく、大学では数学を専攻していた。 この本は、岩田先生の知識を、私のような専門外の人が「丁寧に」理解していこうというものである。 まずは関心の高い「無症状者の感染力」からみてみよう。 岩田氏は5月25日のbuzzfeedの記事で、感染してもずっと症状が出ないまま過ぎる人(無症候・者)について、「少なくとも症状がある人や、発症直前(presymptomatic)の人に比べると感染リスクは低いであろうことが台湾などでのデータでわかっています」と述べている。 しかし、ここで参考にされている台湾のデータは「発症前でも感染させるリスクが充分高い」ということ