イチローさんは自分の感性を徹底的に信じてきた人だ。振り子打法のころから、いわゆる世間のバッティングセオリーとは違うから、いろんな人に「直せ」と言われてきたけれど、自分の「こう打つのが気持ちよいのだ」という感覚をゆずらなかった。 スイートスポットの狭い細いバットにしても、それを手にした時の「絶対にこれで打てる」という感覚を疑わなかった。悪球に手をだすとよく言われる彼独特の広いストライクゾーンにしても、それが自分の感覚なのだと決めている。 世間でのセオリーが何であれ、自分の感覚を信じて貫くという生き方、これはすごいと思った。ぴんと張り詰めた感覚があって、その規準でイエスかノーかを決める。イチローはそれを全部試している。例えばバッティングに入る時の所作にしても、ああいうふうにすると一番集中できるということが、自分の感覚で分かっているからやっている。 「感覚」「クオリア」というのはもともとは厳密な