文:林昌英 ショスタコーヴィチは“ムズカシイ”?――そんなことはありません 「20世紀ソヴィエトを代表する大作曲家、ドミートリー・ショスタコーヴィチ(1906〜1975)」 筆者はショスタコーヴィチについて書くときはだいたい、このような一文から始めます。 しばらく前までは、「少年時代から才能を発揮した天才だったが、スターリン以降のソヴィエト当局の批判や圧力に翻弄された作曲家…」「しかし、表面的にはわかりやすい楽曲を作って当局に従っているように見せながら、批判的な裏のメッセージを巧みに込めるという二重言語を駆使して、体制の矛盾や理不尽さを音楽で告発してきた…」といった説明もセットになっていたと思います。 こういう認識は、裏を返せば、ソヴィエト連邦のことを知らなければ、そしてソ連時代の演奏を知らなければショスタコーヴィチは理解できない、という考え方にもつながります。「ショスタコは苦手で…」とい
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