わたしが妊娠中に体験したワースト・オブ・修羅場は、夫の転職騒動である。 一時期はそれで仲が険悪になって別居していたぐらいだ。 確かあれは妊娠5か月くらいの頃だっただろうか。 夫が突然、「仕事をやめる」と言いだしたのだ。 それも転職をするのではなく、脱サラして飲食店を開きたいというのである。 わたしが顔の配置が変わるほどびっくりしてしまったのも無理はない。 夫とはそれまで10年弱一緒に過ごしていたが、飲食店を開きたいなどという話は1度も聞いたことがなかったのだ。 それが昔からの夢でそのための準備も万全であるならばわたしが言うことは何もない。 夫にはやりたいことをやってほしいし、仕事のことに干渉するつもりはさらさらない。 しかし、しかしだよ? よくよく聞いてみれば「もしかしたら◯◯さんが資金を出してくれるかもしれないから」とかいう大変ふわっとした理由でどうやら開業に興味がわいたらしいのである。