敷村良子の小説『がんばっていきまっしょい』は息の長い作品である。1995年に第4回坊っちゃん文学賞大賞を受賞した本作は、1998年に映画化されロングラン、後に2005年にTVドラマ化。そしてこの2024年にはアニメ映画化……『あした世界が終わるとしても』などを手掛けた櫻木優平が監督した本作もまた、原作執筆から30年近く経った今でも決して古びていない原作のポテンシャルを存分に発揮した一作となった。 原作の発表から約30年経っているという事実を踏まえて今回の「アニメ化」に立ち会うとき、そこで見えてくるものとは何だろうか。「ボート競技」の物語が長きにわたり「延長」されたことは何を意味するのか。ボート部の活動に打ち込んだ彼女らの軌跡を追うことで考察しようと思う。 本作の主人公・村上悦子は、一言で言えば「諦めた少女」だ。幼い頃は体格に優れ足も速くリーダー的存在だったが成長するにつれみんなに追い越され