生物が生命活動のエネルギーを作るため、細胞内の小器官ミトコンドリアが呼吸で取り込んだ酸素や水を変化させる仕組みを、兵庫県立大の吉川信也教授、村本和優准教授らのグループが解明した。 ミトコンドリアは二重の膜に包まれた構造で、水や酸素などを化学反応させ、エネルギー源となるアデノシン三リン酸(ATP)を合成している。吉川教授らは、内側の膜上で、酸素と水素イオンが電子をやり取りする反応を担う「チトクロム酸化酵素」に注目。牛の心臓からこの酵素を取り出し、大型放射光施設「スプリング8」で解析した。 その結果、まず酵素に含まれる色素「ヘム」の一種が内膜を通じて酸素をキャッチ、別のヘムから電子を受け取っていた。電子を失った側のヘムは、プラスの電荷を帯び、水素イオンを反発力で一気に外膜へと送り出し、ATP合成の燃料に変えていた。 ヘムには、水素イオンの通り道をふさぐ役割もあり、1000分の1秒の速さで「扉」