本書『プラグマティズム』は、アメリカ出身のプラグマティスト、ウィリアム・ジェイムズ(1842年~1910年)による著作だ。1907年に発表された。 プラグマティズムは、チャールズ・サンダース・パースによって19世紀に開発され、ジェイムズを経て、ジョン・デューイに引き継がれた比較的新しい思想だ。本書は、ジェイムズがプラグマティズムについて論じた講義をまとめた著作だ。 対立を調停しようとする哲学 プラグマティズムと聞くと「中身の薄いアメリカ的実用主義だ」と考えるひともいるかもしれない。 正直なところ、私も初めは(というか、読む前に)そう思っていた。しかし実際に読んでみるとそれがかなりの部分において偏見であることに気づかされた。 ジェイムズは本書の冒頭で以下のように言う。 私たちの社会には様々な対立がある。それは日常生活においても、また文学や美術においても見られる。哲学でも全く同様の対立がある。