ここにぼくのはつこいのおもいでって、かいたことありましたっけ?ない?じゃあかきます。 ■ ムラシットがはじめて「こい」というものを知ったのは、彼がようちえんに通っていたときのことでした。そのころにあったことで、ムラシットが覚えていることは、そう多くはありません。たとえば、戸棚のなかで育てていたヒヤシンスのこと、たとえば、年長組のヨシムラくんにいつもいじめられていたこと、たとえば、いもほりのこと、たとえば、昼下りにひとりで、図鑑を読んでいたこと、たとえば、日射しがまぶしかった日のこと。 ですから、ムラシットがその「こい」について思いだせることも、やはり多くはありません。まあいいです、ゆっくり思いだしていきましょう。 ■ 「じゃあ今日はカレーを作ってみることにしましょうか」先生たちがすっかり準備をととのえたあとで、ナガエ先生がみんなにむかって言いました。コバヤシさんがまっさきに「はい」と答えま