novelcluster.hatenablog.jp こちらに参加します。 雨の日は雨のにおいが支配する。普段、街中にふわふわと漂っている柑橘系の防腐剤のにおいは、雨のにおいに覆い隠されていた。 朝からの雨、彼は開店前のスーパーの庇で雨宿りをして、車道を挟んだ向こう側の歩道に目を向けていた。そこには小さな公園があり、桜の木があり、その下に何人かの少女たちが集っていた。彼女らはみな薄地の長袖の制服を着ていた。春の、桜の季節のセーラー服だ。白地に紺の襟。スカーフの色はそれぞれで違っていて、臙脂か水色か乳白色。学年の違いを示しているのかもしれない。けれど、彼には彼女たちの誰が一年生か二年生か三年生かの見分けはつかない。同じ年代にいなければ、一年二年の差などわからないものだ。 桜の木は歩道の上にまで枝を伸ばしていて、雨に散る花びらが、濡れて濃い灰色に染まったアスファルトを彩っていた。色の違う地面は