下北沢の町を、小さな子どもを抱えて歩くECDを見たことがある。ECDが結婚して父親になったという話は聞いていたし、彼の著作(『失点・イン・ザ・パーク』)に書かれた厳しい生活の状況も知っていたので、その姿は何やら胸に沁みる光景であった。まさに「生活する者」の姿がそこにあったようにおもえたのだ。余計なお世話だが、赤ん坊を抱える手がややおぼつかず、落としたらどうしようと心配したことを覚えている。 ECDというのは80年代後半から長らく活動しているラッパーで、90年代にはメジャーレーベルからたくさんの音源をリリースしていたが、彼自身の著書によれば、メジャーとの契約が終了して以降は経済的に逼迫し、日中は仕事をしながら自主レーベルからのリリースやライブ活動というかたちを音楽をつづけていたという。アルコール依存症で体調を崩した時期もあったようだ。それでも、下北沢で見かけた彼と、彼の腕にしがみつく小さな子
![『働けECD わたしの育児混沌記』/植本一子 - 空中キャンプ](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/7991692b8f983db38243195599ab90293b285552/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fcdn-ak.f.st-hatena.com%2Fimages%2Ffotolife%2Fz%2Fzoot32%2F20110922%2F20110922155317.jpg)