カート・ヴォネガット(Jr.)(1922〜)アメリカ 代表作、『猫のゆりかご』、『タイタンの妖女』、『ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを』『スラップスティック』等 「愛は負けても、親切は勝つ」 浅倉久志訳『ジェイルバード』より ヴォネガットは非常にシニカルな作家だ。視点が非常にユーモラス、事件はシビアに展開していき、人類の滅亡にいたるような物語(『猫のゆりかご』『ガラパゴスの箱舟』等)も数多く書いているけれど、それでもノアの箱舟のように人々は生き残り、その生き残った人々が、ノアのように選ばれた善人でないところがまた良い。絶望的なのに、無人島で生活しているような奇妙な爽快感のある中で、幕を閉じる物語は、不思議なヒューマニズムに満ちている。 カート・ヴォネガットは、日本ではSFの棚に入れられている作家だ。 だけど、SFだと思って彼の作品を紐解くと、間違いなくかなりギョッとさせ