好きなことを極めるうちに、なりゆきがなりわいになり、ライターから音楽プロデューサーになった 米田:松尾さんは一度もいわゆる会社勤めをしたことがないということなんですが、若い頃に、自分のキャリアについてはどう考えられていたのかもお聞きしたいんです。僕の個人的なこの本(『松尾潔のメロウな日々』)のクライマックスは、松尾さんが「なりゆきがなりわいになった」と書かれていることだと思っているんです。 松尾:ありがとうございます。僕はR&B を好きで聴き続けてきただけで、将来ライターになろうとかプロデューサーになろうとか思っていたわけではありません。だから、本当になりゆきなんです。履歴書を書かない人生なんですね。エントリーシートっていう言葉にすごく憧れがある(笑)。 米田:そこが逆にすごいなぁと思うんです。 松尾:今でこそR&Bは市民権を得ているかもしれませんが、聴きはじめた当時はあくまでマニア向けの