最年長初優勝を決めて引き揚げる西の花道。37歳の男の目から熱いものがあふれ出した。「緊張していたのもあったし、瞬間的に色々なことを思い出したから」。本人も想像していなかった平幕Vは、平成13年秋の琴光喜以来。賜杯を抱いて、「いろんな人に支えられて。辞めなくてよかったよ」。 大島親方に誘われ、モンゴル出身力士の第一陣として旭鷲山らと来日したのは20年前。17歳だった。しかし相撲部屋の生活になじめず入門半年で脱走。故郷に帰ってしまった。現地まで連れ戻しに来てくれた師匠の「相撲はモンゴルの時代になる」の説得がなければ、この日はなかった。 昨年名古屋場所では連敗が重なり、一度は「辞めたい」と申し出たが師匠は聞き入れなかった。「家族も『もう良いよ』と言ってくれるかと期待したんだけど誰も言ってくれなかった」と笑う。 親方になるため日本国籍は取得済み。大島親方の名字をもらい、太田勝が本名である。本来なら