重大事件において、被害者の氏名を公表することが社会的に意義を持つ、という考え方そのものについては、「そういう側面もあるだろう」というレベルでは合意できると思っている。ただ、「これが社会的意義である」という内容が各人でまちまちすぎて、話が錯綜している、というのが現状なんだろうな。 知る権利と報道の自由という観点や、権力の監視という観点において、実名報道が一定の役割を持っていることは否定できない一方で、社会的規範と個人の権利のバランスというものは社会のあり方の変容とともに揺れ動くものだ。死者にプライバシーはない、というのは非常に卑怯な物言いだと思っているのだが、死者のプライバシーは時として残された生者のプライバシーに直結しており、間接的にプライバシーを侵害している、ということが多々あるのだ。 実名報道の本質的な問題はもっと低いレベルにあると思っている。実名報道が必要だ、というマスコミそのものの